令和6年度高岡市歯科医師会学術講演会

 

令和6年6月16日(日)に高岡市歯科医師会学術講演会を開催しました。講師に新潟大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野教授・世界保健機関(World Health Organization、以下WHO)口腔保健協力センター・国際歯科連盟理事の小川 祐司先生をお招きし、「2030年に向けてのグローバルオーラルヘルスプロモーション–日本の果たすべき役割とは–」と題しご講演いただきました。

 先生はWHO口腔保健部で2014年〜2017年に統括歯科医官として勤務されており、まずはWHOの役割についてご説明いただきました。WHOは世界の全ての人々の健康の保護、増進のための国際保健活動を目的とした、国際連合の専門機関であります。根元として歯科医師会の政策や情報がWHOに科学的根拠として提供されるいう点からは、我々の日々の診療がWHOの活動につながっているとも言えます。続いて、以下の内容をご説明いただきました。

 

○グローバルイニシアチブについて

持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals ; SDGs)の中の、歯科と関係性がある目標3「GOOD HEALTH AND WELL-BEING」を世界で達成するために、WHOとしては、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下UHC)と呼ばれる「全ての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」仕組みを世界中でつくることに重点を置いている。また生活習慣に関わる若年死亡率を、予防や治療を通じて減少させ、精神保健および福祉を促進することに着目しており、他分野と連携の上、世界的共通の課題として取り組む必要があると考えている。

 

○WHOにおける2030年に向けての口腔保健について

生活習慣病と口腔疾患は共通のリスクファクターをもつため、共通した対策が、口腔および全身の病気の予防に効果的である。このことからWHOでは口腔保健がUHC到達への重要課題としている。その上で今後の口腔保健に関する戦略として、

① 口の健康を維持することを世界共通の課題の一つとしていくこと

② 口の健康が、全身の健康や病気のリスク軽減に関連することを啓蒙していくこと

③ いつでも全ての人に平等な口腔保健を確立することが必要である。

  これらのことを実現するために、広い視野を兼ね備えた口腔保健人が求められていることを

  お話しいただきました。

(高岡市歯科医師会 学術委員 小原彰浩)