令和2年度 高岡市歯科医師会Web公衆衛生講演会を開催しました
令和2年度 高岡市歯科医師会Web公衆衛生講演会
日時 令和3年2月24日(水)
場所 高岡市歯科医師会内
令和3年2月24日(水)の19時30分より21時まで、令和2年度高岡市歯科医師会Web公衆衛生講演会が行われました。
富山県高岡厚生センター所長、守田万寿夫先生をお招きして、「新型コロナウィルス感染症の現状とその対応について」の演題にてご講演いただきました。
今回の講演会は演者のご協力によりWebライブ配信形式で行いました。
歯科外来診療における院内感染の防止について、細やかに指導していただき、より安全で安心な歯科医療を提供できればと思います。
・新型コロナウィルス感染症
2019年11月中旬に中国湖北省武漢市で最初に発生し、全ての省に蔓延。また、アジア、ヨーロッパ、北米、アフリカ、オセアニアなど他の190の国、地域にも拡散しパンデミック状態となっている。特に北米、南米、ヨーロッパ各国、ロシア等で大きな流行。
・新型コロナウィルス感染症の症状
発熱、咳、だるさ、食欲低下、息切れ、痰、筋肉痛。味覚嗅覚障害は感染者の2~3割でみられる(若い世代で多く、高齢者では少ない)
風邪やインフルエンザと区別がつかない。いつもと様子がおかしい(食事量が減った、横になっていることが増えた等)の気づきを大切に
・新型コロナウィルス感染症の経過
発症〜1週間程度‥ 軽症(かぜ症状・嗅覚味覚障害)のまま治癒(80%)
1週間〜10日‥ 肺炎症状(呼吸困難、咳、痰)が増悪し入院(20%)
10日以降‥ 人工呼吸管理など集中治療室へ(5%)
70代では20人に1人、80代以上では8人に1人が死亡
・新型コロナワクチンとして開発が試みられているワクチンの種類
①不活化ワクチン②組換えタンパク・ペプチドワクチン③DNAワクチン④mRNAワクチン⑤ウィルスベクターワクチン
・ワクチンの効果について
①感染予防 接種した人が感染しない
②発症予防 発症者が減少
③重症化予防 重症患者が減少(死亡・入院等)
ファイザー社のワクチンに関しては感染予防にも効果があるとの報告も多数ある。発症予防、重症化予防に関しては臨床試験(治験)等で評価を行うことができる。集団免疫効果(接種してない人にも波及する予防効果)は大規模な接種後までわからない。安全性について、国内治験では死亡及び重篤な害事象は認められていない。
・新型コロナウィルスへの対策
クラスター(集団)の発生を防止することが重要であり、日頃の生活の中で3つの密(換気の悪い密閉空間、多数が集まる密集場所、発声をする密接場面)が重ならないよう工夫する。年末年始に富山県内で発生した感染の連鎖は、忘年会、帰省、新年会、成人式での会食等を通じた感染。
普段会わない人と接すると、他のネットワークへ感染が広がる可能性がある。高岡圏域における2020年2月〜9月に帰国者・接触者外来を受診した有症者571人(濃厚接触者等を除く)のPCR検査陽性者は16人で陽性率が2.8%であった。感染者との接触が疑われる行動歴のない者は陽性率が極めて低い。また、濃厚接触者のPCR検査受検者212人のうち陽性者は20人で陽性率は9.4%であり、家庭内における感染予防策が重要である。その他の接触者では、受検者187人で陽性者はいなかった。マスク、手指消毒等をしている場面では、二次感染は起きていない。職場内感染事例では、換気が不十分な狭い部屋で二次感染発生。
・歯科診療における院内感染対策
①歯科における標準予防策
②歯科治療時の感染防止対策
③歯科治療器具・器材の洗浄・消毒・滅菌
④環境対策と感染性廃棄物処理
⑤歯科に関連する診療行為の感染予防対策(病態写真撮影、X線撮影)
⑥歯科技工に関連する感染予防対策
・標準予防策+感染経路別予防策(空気感染予防策、飛沫感染予防策、接触感染予防策)
・診察室の換気方法
①機械換気(部屋に備え付けの換気設備の使用)→換気設備は常にONに
②自然換気(窓やドアを開けることによる換気→30分に1回は5分以上、2方向の窓や扉を開けて換気
始業時、昼休憩、午後4時の3回は、全窓を開けて換気
③+α換気(サーキュレーターや扇風機を用いた換気
・手指衛生
手洗いに液体石けん、ペーパータオルを配備(タオル共用はNG)
施設出入り口、部屋出入り口に手指消毒薬を配備(入退室時に使用)
目に見える汚染がある場合→石けんと流水による手洗い
目に見える汚染がない場合→速乾式手指消毒薬
手袋などの防護具を外した後も手指衛生
・汚染されやすい環境
無影灯のアーム、ヘッドレスト、ブラケットテーブルやスイッチ、PCのキーボードや引き出し等。
環境整備の方法として、汚染されやすい表面のラッピングが有効。
筆記用具も高頻度接触面なので個人持ちにする。
待合室も消毒が困難なものは置かない。
・洗面所での歯磨きクラスター
感染経路について様々な可能性の一つとして挙げられただけであり、詳細はわかっていない(日本口腔衛生学会見解)。重要なのは歯磨きのリスクをどう評価するかであるが、学校生活の他の場面と同様に、3密対策、換気、接触感染対策を実践することが大切と理解したい。
・器具の洗浄・消毒・保管
洗浄は最も基本的で重要な行程である。診療器具の感染管理カテゴリー分類(クリティカル、セミクリティカル、ノンクリティカル)に応じた適切な滅菌、消毒を行う。食洗機など利用して十分に感想させて保管する。
・歯科用ハンドピースのメンテナンス、歯科ユニットの給水系の管理
ハンドピースのメンテナンス・滅菌。歯科ユニットの給水系ホース内のフラッシングを行う。
玄関口に体温測定、手指消毒、問診の関門を設置し、クリニック内にウィルス、細菌を持ち込まない。
また職員がウィルスを持ち込まないために、施設ごとに検討すべきルールとしては以下に示す。
1.出勤時のチェック項目→体調、体温、同居家族の体調
2.欠勤すべき条件→発熱、咳、味覚嗅覚障害など
3.施設外(私生活)での行動制限→旅行や宴会など(緊急事態宣言下ではやむないが、長期化する中難しい。)
・新型コロナウィルスの3つの顔
第一の感染症『病気』
第二の感染症『不安』
第三の感染症『差別』
この感染症の怖さは、病気が不安を呼び、不安がさらなる病気の拡散につながり、差別や風評被害を生む。
・守田先生の目線での、目指すべき目標としての院内感染対策
①孤発例はどこでも発生しうる。(患者、スタッフ)
②孤発例が発生しても二次感染は出させない・クラスターにはさせない。
③孤発例が発生してもスタッフや患者を濃厚接触者にはならせない。
(石多 謙一)