令和7年4月13日(日)に令和7年度高岡市歯科医師会学術講演会を開催しました。慶應義塾大学医学部 歯科・口腔外科学教室 教授 中川種昭先生をお迎えし、「歯周病の概念と治療 − 全身疾患との関わりを含めた38年の変化 −」と題してご講演いただきました。

まずは、歯周病には治りやすいタイプと、治りにくいタイプがあり、後者にかかわる要因としては、①コントロール不良な糖尿病、②喫煙、③免疫能に影響する疾患、④病原性の高い細菌叢をもつ宿主、があることを説明いただきました。特に、(口腔内の清掃不足などによる)口腔内常在菌叢のバランスの破綻が結果として歯周組織の破壊につながるという、病因の基本を解説いただきました。

一方で、歯周病は単なる口の中の疾患にとどまらず、全身的な健康状態と密接に関連する疾患として再定義されつつある現状にも言及されました。特に糖尿病に関しては、歯周病が「第6の合併症」として国際的にも認知されており、両者は相互に病態を悪化させることが明らかになっています。
 また、歯周病原細菌が経腸的に消化器がんに影響を及ぼすこと、血液を介して脳の神経細胞を変性させ、アルツハイマー型認知症の進行にかかわること、加えて最新の動物実験では、動物の認知機能が低下するとともに、骨密度や筋力の低下がみられ、老化全般に影響があることについてもデータをお示しいただきました。その他、関節リュウマチ、早産、慢性腎不全、感染性心内膜炎、動脈硬化症、脂肪性肝炎など、歯周病との関連が示さされている疾患は年々増加していることが紹介されました。  

歯周病の治療に関しても、基本的な治療の重要性、そしてケースにより歯周外科手術・再生治療の有効性について、ご自身の経験をふまえ、わかりやすく解説いただきました。糖尿病をもつ患者さんの歯周病治療の経過では、「歯周病の治療を行うことは、糖尿病治療薬を一剤追加するのに匹敵する」という内科の先生の言葉を引用されながら、実際に歯周病治療が糖尿病の改善に寄与することをお示しいただきました。

今回は歯科医師のみならず、医師・薬剤師の先生方も参加されており、医歯薬連携においても、良い意見交換の場になったと実感いたしました。  

(高岡市歯科医師会 学術 津野 宏彰)